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寺尾中城(群馬県高崎市) [古城めぐり(群馬)]

IMG_7230.JPG←四ノ郭群前面の畝状竪堀
 寺尾中城は、歴史不詳の城である。『吾妻鑑』には、1180年の源頼朝挙兵の際、同じ清和源氏の一族新田義重が上野寺尾城に引き籠もって軍兵を集めたとあり、それが寺尾中城ではなかったかとの説がある。しかし新田氏の本拠は新田庄であり、新田庄周辺に一族が盤踞していたことから、遠く西に離れた寺尾中城に立て籠もったとは考えにくいと思う(義重の子、山名義範がこの地域に土着していたとしても)。また応永年間(1394~1427年)に後醍醐天皇の孫、尹良(ゆきよし)親王が世良田政義の支援を受けて寺尾城に籠もったとの伝承もあるが、そもそも尹良親王なる人物が実在したかが疑わしいので、史実とは見做し難い。結局、はっきりしたことはわからないが、寺尾城砦群(上城・中城・下城茶臼山城)の中で最大の城域を有し、一部に技巧的な構造も見られることから、武田氏支配時代に武田氏か武田氏に服属した西上野の有力豪族が改修した城砦ではなかったかと個人的に推測している。

 寺尾中城は、観音山ファミリーパークから北東に伸びる長い稜線上に築かれている。公園から散策路が整備されているので、訪城はたやすい。基本的には尾根上に曲輪群を連ねた連郭式を基本とした縄張りであるが、派生する支尾根にはことごとく小郭群を配置するなど城域はかなり広範囲に及び、主郭背後の堀切から五ノ郭先端の堀切まで、直線距離でざっと600m以上にも及ぶ巨城である。しかし一つ一つの曲輪は小規模で、最も広い三ノ郭でも大した居住性を持っていないので、位置付けとしてはあくまで有事の際の詰城であろう。城内は大きく5つの曲輪群に分かれる。南西端の最高所に位置するのが主郭群で、背後を二重堀切で分断し、北西側に一段低く虎口郭を置いて枡形虎口を形成している。また南の支尾根に2段の段曲輪と、堀切を挟んで舌状曲輪を配置している。主郭の東に二ノ郭群がある。二ノ郭群は背後に堀切を穿ち、前面に小郭を置いた、簡素な構造である。二ノ郭群から三ノ郭群に至る間には、小丘状の繋ぎの曲輪があり、やはり背後に小堀切がある。前面にも堀切があるとされるが、現況からははっきりとは認識できない。繋ぎの曲輪の先に三ノ郭群がそびえている。曲輪の数では三ノ郭群が城内で最も規模が大きく、長さも全体で160m程もある。頂部の曲輪の西から北面に腰曲輪が廻らされ、更に北に伸びる尾根に沿って下段の曲輪が長く伸びている。下段の曲輪の付け根付近の両側に堀切が穿たれ、また曲輪の先端には枡形の土塁がある。その下方に堀切が穿たれた小郭があり、この堀切は東側に横堀となって伸びている。また西側は大竪堀となって落ちている。三ノ郭群には、更に西の支尾根と北西の斜面にも腰曲輪群が築かれ、その側方にはいずれも竪堀が穿たれている。西尾根曲輪群では下段の腰曲輪の外縁部に二重竪堀が穿たれている。また北西斜面の一番広い腰曲輪では、櫓台を備えた虎口を有し、竪堀に連結している。従って、竪堀が通路として機能していたことがわかる。三ノ郭群から四ノ郭群へ至る尾根は長い土橋となっているが、静岡の城ではこれを「一騎駆け」と言っている。四ノ郭群は、中間部東側に大竪堀が落ちている。一部垂直絶壁となった崩落地形も見られるが、竪堀状の城道であったことが後で絶壁上に物見台を見つけたことからわかった。四ノ郭群の前面の遺構は、寺尾中城で最も技巧的な部分である。坂土橋の側方に横堀と竪堀を組み合わせ、外周土塁と土橋をL字状に連結させた構造で、更に側方の竪堀は畝状竪堀を穿っているのである。ここの畝状竪堀は、横堀から落ちる形状となっており、そのためコブ状の畝を持っている。その先の急な尾根道を降って暫く行くと、ようやく五ノ郭群に至る。五ノ郭群の下段曲輪には鍛冶平稲荷神社が祀られている。五ノ郭群の先に小規模な二重堀切が穿たれている。その先の尾根は自然地形の様である。静岡(駿河・遠江)の城で二重堀切と言えば武田氏の専売特許の様になっているので、畝状竪堀・一騎駆け土橋などの遺構と合わせて考えると、寺尾中城は武田氏勢力による城と考えたい。

 尚、残念なことに、ネット上で見られる寺尾中城の案内と縄張図は、いずれも遺構の見落としがかなり多く、正確性に欠けてしまっている。一番実情に近いのが安曇野風来亭さんのHPにある鳥瞰図だが、それでも畝状竪堀や支尾根の小郭群は見落とされてしまっている。そんなわけで想定以上に広範囲に遺構があり、予想外に時間と体力を費やしてしまった。
土塁に連結する坂土橋→IMG_7233.JPG
IMG_7288.JPG←五ノ郭群先端の二重堀切

 お城評価(満点=五つ星):☆☆☆
 場所:http://maps.gsi.go.jp/#16/36.291253/138.997629/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0f1


関東の名城を歩く 北関東編: 茨城・栃木・群馬

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 吉川弘文館
  • 発売日: 2011/05/31
  • メディア: 単行本


タグ:中世山城
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middrinn

いつも興味深い内容なんですけど、
今回は特に興味深く拝読m(__)m
by middrinn (2018-05-21 07:47) 

アテンザ23Z

>middrinnさん
いつもご愛読いただきありがとうございます!
寺尾中城では、なぜかネット上の情報が不正確、というか、遺構の確認漏れが多かったです。実際に支尾根も含めてあちこち見て回ったら、後から後からどんどん出てくる感じで、大変でした。こうゆうのをまさしく「嬉しい悲鳴」というのでしょう。
by アテンザ23Z (2018-05-21 21:12) 

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